この暴力的なさびしさを









「人は結局、一番大切なこと以外には、最終的には無関心にならざるを得ないんです」

先生は振り向かない。身じろぎ一つしないで、軽くうつむいたまま、少し延び過ぎている
黒髪から青白いうなじをのぞかせている。

よく着ているけれど一向にくたびれない白いボタンダウンシャツと、黒いローブの背中。
対照的に、先生が生まれる前に作られたように見えるぐらい古ぼけている書類机と椅子。

作業テーブルに積んであった学術書を棚に著者名のABC順に戻し終わり、私はなんだか
やりきれない気持ちで、先生の背中から首に腕をまわして、そっと肩に頬を埋めた。


「先生が私をそんな風に思ってくれるかわからないし、」


ああ、先生の肌はこんなに温かい。



「自分が最後までこのままでいられるかも、私にはわからないんです」