ルーシー












星が、煌々とあかるい。シリウスのゴーグルに、ぐるりと天体がそのまま反射して光る。
レザージャケットの背中にしがみつきながら、彼の耳元に向かって
叫んでみるけれど、自分の声すら向かい風を切る轟音にかき消され、時速120キロの
速さで背後に吹き飛んでいく。
3日前に切った髪が、ばたばた耳元を叩くように揺れる。

スピードがぐっとあがる、見上げる彼の横顔に、犬歯がのぞく。

彼の頬と同じ高さに、10の34乗カラットのダイアモンドが白く輝いている。
確かに、誕生日にはダイヤが欲しいとは言ったけど!言ったけど!



街の灯が星より遠く瞬くまで走り、シリウスはようやく減速し、バイクはごくゆっくりと夜空を横切る。
爆音がやみ、ぼうっと麻痺した私の耳が少しずつ正常に戻る。どこまでも、無音。

澄んだ夜空に、濡れたようにはりついている星は、今日は色も大きさもはっきりと違いがわかるほどにぴかぴかと光る。
凍る白い息。

「さむい!!」
思いっきり非難の色をにじませて叫ぶ。
シリウスはゴーグルをずり下げて、ようやく振り向く。

「ほら、宇宙一大きいダイヤモンドだ」

彼の指さす先には、ルーシー。



「最高のプレゼントだろ?」
「…あんなの、大きすぎて指輪にできないじゃない」
「できるさ」

そう言ってシリウスは、寒さでかじかんだわたしの手を取って、星の高さに挙げて見せた。
薬指のつけねにルーシーが光る。

いやああああ!気障!気障!!
言葉をうしなう私。


「欠片ぐらいなら、今度とってきてやるよ」

にやにや笑いに苦笑を返して。

「台座はプラチナでおねがい」


冷たい頬がふれたころ、腕の時計がゆっくりと12時をまわった。





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Rabbit!管理人のしっぽちゃんへの誕生日プレゼント。
なれない犬夢でおめでとう。
ロマンチック!ロマンチック!



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2010/12/17
ゆで